猫の心筋症 その1
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猫の心内膜心筋型拘束型心筋症について
先日知人から猫の心臓を見てほしいとのことで見せてもらった症例のお話ですが、なかなか見ることもないので皆さんも心臓病の一つとして知っておいてもらうといいでしょう。
猫ちゃんの心臓はワンちゃんのように「雑音」を主にする弁膜症は少ないため心臓は超音波で確認しないとよくわかりません!
気になる時は心臓の形態だけでもいいので確認しておくことをお勧めします!
1. この病気はどのようなものですか?
拘束型心筋症(Restrictive Cardiomyopathy: RCM)は、猫でみられる心筋症の一種です。RCMには大きく分けて、
- 心筋型(myocardial form):心筋そのものの線維化が主体
- 心内膜型(endocardial form):心内膜(心臓内側の膜)の高度な線維化・肥厚が主体
の2つのタイプがあり、今回ご説明するのは心内膜型です。
心内膜型では、左心室の心内膜が著しく肥厚・線維化し、時に心室の一部が瘢痕組織によって癒着・閉塞したような形態(いわゆる「隔壁様構造」)を呈することがあります。これにより左心室の拡張機能(血液を受け入れて広がる能力)が著しく障害されます。
昔は「左室二腔症」と呼ばれていました。字の通り左心室に部屋が二つできることです。
心筋の収縮力(ポンプ機能)自体は比較的保たれていることが多い一方で、心室が硬く広がりにくくなるため、心房(特に左心房)に強い負担がかかり、左心房の著しい拡大を伴うことが特徴的です。

2. 原因
明確な原因は未だ十分には解明されていません。現在考えられている要因には以下のようなものがあります。
- 過去の心内膜炎・心筋炎(ウイルス感染などを含む)の既往による瘢痕化
- 心筋梗塞様病変(微小血管障害)の関与
- 特発性(原因不明)のケースも多い
肥大型心筋症(HCM)のような明確な遺伝的原因は、現時点では確立されていません。
3. 症状
初期は無症状のことも多く、健康診断や他疾患の検査中に心雑音や不整脈から偶発的に発見されるケースもあります。病態が進行すると、以下のような症状がみられます。
- 元気消失、食欲低下
- 呼吸促迫・努力性呼吸(口を開けて呼吸するなど)
- 運動不耐性(あまり動きたがらない)
- 後肢の麻痺・強い痛み・冷感(動脈血栓塞栓症:ATE、いわゆる”saddle thrombus”による急性発症)
- 稀に失神
特に危険なのが左心房内の血栓形成とそれに伴う動脈血栓塞栓症です。左心房が著しく拡大し血流がうっ滞するため、血栓ができやすく、この血栓が大動脈分岐部などに詰まることで後肢の急性麻痺を引き起こすことがあります。これは緊急疾患であり、突然の後肢麻痺がみられた場合はただちに受診が必要です。
4. 診断
- 聴診:心雑音、奔馬調律(ギャロップ音)、不整脈の聴取
- 胸部レントゲン検査:心陰影の拡大、肺水腫・胸水の有無の確認
- 心臓超音波検査(エコー検査):確定診断に最も重要
- 左心房の著明な拡大
- 左心室内腔の変形・部分的な閉塞様構造(心内膜の肥厚・線維化)
- 拡張機能の低下(僧帽弁血流パターン、組織ドプラ所見など)
- 左心室壁厚・収縮性は比較的保たれることが多い(HCMとの鑑別点)
- 血液検査:NT-proBNP(心臓バイオマーカー)、腎機能・電解質など
- 心電図:不整脈の評価

5. 治療方針
心内膜型RCMには根本的な治療法(構造異常を治す方法)は現状ありません。治療は症状のコントロールと合併症の予防が中心となります。
主な治療薬
| 目的 | 薬剤例 |
|---|---|
| うっ血性心不全のコントロール | フロセミド、トラセミド等の利尿薬 |
| 血栓塞栓症の予防 | クロピドグレル(抗血小板薬)、場合によりリバーロキサバン等 |
| 心拍数・不整脈のコントロール | β遮断薬、ジルチアゼムなど(病態による) |
| 血管拡張・後負荷軽減 | ACE阻害薬など(病態に応じて) |
治療内容は個々の猫の心エコー所見、心不全の重症度、不整脈の有無などにより大きく異なります。定期的なモニタリングをしながら薬剤を調整していく必要があります。
6. 予後
心内膜型RCMの予後は、症例の重症度や血栓塞栓症の有無によって大きく異なります。
- 無症状〜軽度の場合:数年単位で安定するケースもあります
- うっ血性心不全を発症している場合:予後は慎重に考える必要があります
- 動脈血栓塞栓症(ATE)を発症した場合:再発率が高く、予後不良となることが多いとされています
心筋症は進行性の疾患であり、完治は望めませんが、適切な管理により生活の質(QOL)を維持できる可能性があります。













