山県市高富の犬・猫の動物病院『たかとみ動物病院』

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犬の避妊手術なぜ腹腔鏡?

  • 腹腔鏡手術

当院では10年以上前からワンちゃんの避妊手術に対して適応外の症例以外は腹腔鏡での手術を実施しています。
開腹での手術は現在しておりませんのでご理解いただきますようお願いいたします。

腹腔鏡の避妊手術とはどんなものでしょう?
一般的に避妊手術はワンちゃんを飼い始めて、ワクチンの時などによく聞かれるお話ですし、飼い主さんもよく理解されている方が多いのですが、避妊手術をする時期や、そのメリット・デメリットはまた別の所でお話ししますね。
数年前に「ゴールデンレトリバー」の避妊手術は推奨しない!という話も出てきましたので、犬を飼ったら避妊ということばかりも言ってられませんね。

さて話を戻して、当院ではなぜ避妊手術を開腹でしないのか?
もちろん、腹腔鏡でする前は開腹による手術をしていました。(正確には選択肢がこれしかなかった。)のですが、単純に私自身がワンちゃんの避妊手術をするうえで、手技的にどうしても抵抗がある部分がありまして・・・・
それは、卵巣から出ている靭帯を切る手技です。
この手技にはいくつかの方法があり、大した問題じゃないとおっしゃる先生もいらっしゃいますが、実はこの靭帯、最終的に切るのですが、そもそもこの靭帯、というか卵巣というのはお腹の中にあるのですが、通常にお腹をあけてすぐ下にあるわけでなく、背中側にありその靭帯の処理をするためお腹の外に出すように引き抜いたり、伸ばしたりする必要があります。お腹の外に引き上げず中側で行ったとしても靭帯を伸ばす必要があります。この靭帯をどうしても引き抜いたいり、しごいて伸ばすというのに抵抗があり、お腹の外に出さないところで処理していました。
これは手技的なものなので、良いとか悪いの問題ではありません。
靭帯を引き抜くとズルズルっと出てくるのでその後の手技はとてもやりやすいです。
靭帯をしごいて伸ばすのも、ちょっとコツがいりますがまあまあやりやすくなります。
ただ、両方の手技を状況に合わせて手術していたのですが、その感触があまり好きでなく、ここの部分だけでも何かいい方法がないかなぁと、ず~っと考えていました。

不妊化手術(避妊手術)の痛みや不快感はどこから?

手術をした際の痛みの原因についてはいろいろな考えがあります。手術をするためにお腹の皮膚や筋肉を切ることが痛みの原因?それともお腹の臓器を触ることが不快感を起こす? 実際にはどうなんでしょうか??

犬における不妊化手術において痛みがどこから発生するのか、それを研究した一つの報告があります。不妊化するには卵巣を切除する必要があります。卵巣はお腹に靭帯(じんたい)組織(詳しくは卵巣提索)と呼ばれる構造によって背中側に固定されています。卵巣を切除するにはこの靭帯組織を引っ張る必要が あります。この靱帯組織を引っ張ると痛みが発生することが研究で明らかになりました。(Boscan et al., 2012)また、この靱帯組織には多くの神経が走っており、そこに刺激が強く加わるとバソプレシンと呼ばれるホルモンの仲間である物質が血液に放出されます。これには血管を収縮させて血圧を上げる作用があります。ある研究では不妊化手術の最中に、お腹を切開する時や縫ったりする時よりも卵巣を引っ張った時が一番血圧が高くなることが明らかにされました。(Hoglund et al., 2014)

腹腔鏡であっても靭帯を切除することには変わりありませんが、その負担はあらゆる選択肢の中で一番少ないと思っています。

 

内視鏡/腹腔鏡で行う不妊下手術にもデメリットは存在します。一般的に腹腔鏡手術をはじめとする内視鏡手術は手術が開腹手術に比べて複雑になり、難易度があがる傾向にあると考えられています。それに伴い手術時間も長くなってしまう傾向にあります。また、専用の器具や設備などの開腹手術とは異なる施設も必要になってしまいます。それによってどうしてもコストがかかってしまうのもデメリットと考えられます。
このようなデメリットはありますが、研究では、多くの手術件数を持っている執刀医による手術では手術時間の延長や合併症の発生などのデメリットが減少することがわかっています。より熟練した執刀医による手術と共に手術にあたるチームによって内視鏡手術の持つ負担の軽減は生かされていくのです。

くれぐれも誤解のないようにして欲しいのですが、避妊手術をするのは腹腔鏡が良いと言ってるわけではなく、私個人の手術に対する取り組みの一つとして、腹腔鏡を選択しているのです。

そして、その理由の一つが上記に述べたことなんです。
つまり現在は避妊手術は開腹手術と腹腔鏡手術と選択出来る時代であり、飼い主さんにとっても、選択肢が増えたので、それだけ幅が広がりワンちゃんにとっても良いことなのではないかと思って取り組んでいます。

ご理解意いただければ幸いです!

 

 

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