耳の症例 耳垢栓って?
- 耳鼻科
以前耳に落ちていく毛の話を書きましたが、耳の疾患での来院は多いのですが、最近では飼い主さんの病気に対する理解と努力のおかげで再発するケースはかなり低くなっています。
とても喜ばしいことです。
さて、今回は耳の症状がないのに耳に問題があるケースのお話です。
耳垢というのは正常でも出ますので、耳垢があることが悪いこととはなりません。本来は耳の自浄作用により耳垢は外に出されるのですが、外耳炎を経験している子や、基礎疾患があったりする子はその自浄能力が低下しており、知らず知らずのうちに耳垢が溜まっていく事があります。
耳垢の溜まり方も様々で、気づいたら耳垢が固まり所謂耳垢栓というものになったりします。
こうなると厄介で、そうそう簡単にはなくならず結局麻酔をかけて処置に至るケースも少なくはありません。
耳垢だけの問題な場合、耳垢栓まで至っても動物たちは症状を全く出さない(正確には症状があるのだけれども気づいてあげる事ができないような症状)事が多いため、特に耳が悪そうとは思われないのです。
逆に鼓膜に汚れがついて刺激していると、急に耳を振ったり掻いたりするケースもありますがその場合一時的な症状が多いのですぐ治ったと思われがちですが、動物達がその刺激に慣れてしまったりするのかもしれません。
その状況が続いたりしていると耳の常在菌などが急激に増えたり炎症を起こし出したりすると、突然耳が臭く臭ったり、汚れが一気に増えたり場合によっては耳漏(膿のような物)が出たりといった症状が見られます。またそれに伴って急激に耳を振ったり、掻いたり、鳴いたりといった症状が目につくようになります。
この状況で初めて来院ということが普通ですが、その時は多くの症例で増悪因子と言われる細菌やマラセチア(酵母菌)が増えこれが原因と言われる事が多いのですが、確かに症状を伴った時は増悪因子というのを抑えていけば症状は改善していきますが、大事なのはこの菌たちが増える状況、原因が何かを知る事です。
外耳炎を繰り返す場合のほとんどには様々な主要な原因があります。
今回はその一つとして、耳垢の塊をお話ししました。
では、これらはどうしたら分かるかというと、答えは簡単で耳の中をちゃんと見る事です。
ただ、症状が出ている時は不快感が強いため動物達はなかなか耳の奥(鼓膜まで)を確認させてくれません。ですので、はじめにその不快感をとって症状が改善したら見せてもらう事が多いです。
私の経験では症状のない子の6割強の子にこの耳垢などが塊で存在する印象があります。
ですので耳の疾患が多いんですね。
もちろんこれ以外の原因での外耳炎もありますのでそれも見て鑑別する必要があります。
耳垢栓の治療は様々ですが耳垢の性質や耳の状況によって方法も変わりますので飼い主さんに状況と理由をよく理解してもらって決めていくことになります。
こんな事もあるんだなと知ってもらえると動物達の耳の不快が少しでも減っていくんじゃないかと思います!