山県市高富の犬・猫の動物病院『たかとみ動物病院』

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症例紹介

カテゴリー:

肺腺癌と腹腔鏡、そして肥満細胞腫

  • 腫瘍科
  • 腹腔鏡手術

  🐾看板猫ユパくんの物語

〜見つけにくい腫瘍、もう一つの隠れていた病気〜


今回の症例は、たかとみ動物病院の看板猫、ユパくんのお話です。


■きっかけは、健康診断のCTでした

ユパくんは6歳のとき、健康診断として肺の無麻酔CT検査を行いました。
その際、右の肺に小さな影が見つかりました。

すぐに悪いものとは限らないため慎重に経過を見ていましたが、
時間とともにその影は少しずつ大きくなってきました。

そこで、超音波ガイド下でFNA(細胞診)を試みましたが、診断が得られませんでした。
この時点でしっかりと診断・治療を行うため、
肺の病変を手術で取り除くことを決断しました。


 

 

 

 

 


■体に優しい手術「VATS」での切除

右の肺後葉手術は、**VATS(胸腔鏡補助下手術)**という方法で行いました。
カメラを使って行う、体への負担をできるだけ抑えた手術です。

無事に手術は終了し、摘出した組織を病理検査へ提出しました。


 

 

 

 

 

 

 

 


■診断は「肺腺癌」…しかしそれだけではありませんでした

病理検査の結果、肺の病変は肺腺癌でした。

ただし
・転移の兆候なし
・境界明瞭

という所見で、「早期に見つけられてよかった」と考えられる状態でした。

しかし――

詳しく調べていくと、
肺腺癌のすぐ外側に、別の種類の腫瘍が存在していることが分かりました。

それが、肥満細胞腫です。


 

 

 

 

 


■「どこから来た腫瘍なのか?」を徹底的に調べる

重要だったのは、
この肥満細胞腫が肺から発生したものではない可能性でした。

そこで改めて全身を詳しく調べた結果、
脾臓の腫瘍が原因である可能性が高いと判断しました。


■腹腔鏡手術で原因にアプローチ

次に行ったのは、

腹腔鏡での脾臓摘出
腫れていたリンパ節の切除

さらに、
手術中に違和感のあった肝臓の生検も行いました。


 

 

 

 

 

 

 


■結果は「全身性の肥満細胞腫」

検査の結果、

・脾臓
・リンパ節
・肝臓

すべてで肥満細胞腫が確認されました。

つまりユパくんは

👉 肺腺癌と、全身に広がる肥満細胞腫が同時に存在していた

非常に珍しい状態でした。

さらに検査ではC-kit陽性が確認され、
現在は内服治療を継続中です。


■この症例が珍しい理由

少し専門的になりますが、今回のケースは非常に特殊です。

  • 猫の肺腫瘍(肺腺癌)はもともと稀
  • 肥満細胞腫は肺に転移することが少ない
  • さらに
    👉 異なる2種類の腫瘍が同じ場所に存在するケースはほとんど報告がありません

■もう一つ大切なポイント

「見つけにくい腫瘍をどう見つけたか」

猫の肥満細胞腫は、
画像検査だけでは見つけにくいことがある腫瘍です。

実際、通常の検査では
見逃されてしまうこともあります。


■「違和感」を見逃さない

今回の診断で重要だったのは、

👉 「何かおかしいかもしれない」という視点

でした。

通常のエコーでははっきりしなかったため、
当院ではより高精細に見える高周波プローブで再評価を行いました。

すると、

「明確ではないが、正常ではない」

という変化を捉えることができました。


👉エコー比較(通常 vs 高周波)
通常猫の肥満細胞腫は腫れている以外の画像診断で明確な所見がないと言われています。もちろん進行や浸潤の程度により変わりますが、症状が何もないこの時点では、残念ながら特殊プローブまでの検査はしない事がほとんどです。
今回、猫の肥満細胞腫では特殊プローブを使うと「ちょっとおかしいかも?」と判断する見え方なので今後は役に立つかもしれません。


■最終的な決め手は「針生検」

その違和感をもとに
**針生検(FNA)**を行ったことで、

はじめて肥満細胞腫の診断にたどり着きました。


👉細胞診(肥満細胞腫)


■この症例から伝えたいこと

ユパくんの症例から学べることはたくさんあります。

✔ 健康診断での早期発見の重要性
✔ CTや内視鏡手術の有用性
✔ 病理検査の大切さ

そして何より

👉 「違和感を見逃さないこと」です。


■最後に

ユパくんは現在も、看板猫として元気に過ごしながら治療を続けています。
受付や待合室で普通に見かけることもあるかもしれません、その際は撫でてあげてください!

この症例は特別なようでいて、どの子にも起こり得る「見つけにくい病気」の一例です。

調子が悪い、何かおかしいという場合は検査に積極的になれますが、今回のユパくんのように、結局病気の始まりから、今現在まで私たち獣医師、愛玩動物看護師たちがみていても、病気だと思わない日常を過ごしている事があるのです。

私たちはこれからも、
**“見逃さない診療”**、**“見逃さない五感”**を大切にしていきます。


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