山県市高富の犬・猫の動物病院『たかとみ動物病院』

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知って欲しい麻酔のお話②

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◯麻酔中、どんなことを見ているの?

前回は、麻酔に対する当院の考え方や、その子に合わせた麻酔・鎮痛管理についてお話ししました。

今回は、実際に麻酔中にどのような管理を行っているのか、当院で確認していることや大切にしていることについてお話しします。

「麻酔」と聞くと、
“眠らせること”
をイメージされる方が多いかもしれません。

もちろん、麻酔中は意識がなく、眠っている状態になります。
しかし、麻酔はただ眠らせて終わりではありません。

麻酔中は、眠っている間も心臓、呼吸、血圧、体温など、体の状態が少しずつ変化します。
その変化に気づき、必要に応じて麻酔の深さや点滴、鎮痛の方法などを調整しながら、できるだけ安全に処置を進めていくことが大切です。

当院では、麻酔中に心拍数、心電図、呼吸、血圧、体温、酸素の状態、吐き出す二酸化炭素の量などを確認しながら管理しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎心臓の動き

心電図では、心臓のリズムに乱れがないかを確認しています。

麻酔中は、心拍数が遅くなりすぎることもあれば、反対に速くなることもあります。
また、不整脈といって、心臓のリズムが乱れることもあります。

そのため、徐脈や頻脈、不整脈が出ていないかを確認しながら、必要に応じて麻酔の深さや薬の調整を行います。

 

◾︎血圧

血圧は、脳や腎臓などの大切な臓器に血液がきちんと届いているかを考えるうえで、とても重要な項目です。

多くの麻酔薬には、血圧を下げてしまう作用があります。
そのため、麻酔中は血圧が下がりすぎていないかを確認しながら管理しています。

一方で、処置中に痛みの刺激が入ると、心拍数や血圧が上がることもあります。
血圧が上がりすぎることも体への負担になるため、下がりすぎだけでなく、上がりすぎていないかも注意して見ています。

血圧や心拍数は、痛み以外の理由でも変化します。
そのため、数値だけで判断するのではなく、処置の内容やその子の状態とあわせて確認しながら、麻酔や鎮痛の方法を調整しています。

 

◾︎呼吸

呼吸に関しては、ただ「息をしているか」だけを見ているわけではありません。

体に酸素をきちんと取り込めているか、二酸化炭素をしっかり吐き出せているかも確認しています。

酸素の数値は、体に十分な酸素が届いているかを見る目安になります。
一方で、吐き出す二酸化炭素の量は、呼吸が浅くなっていないか、換気が足りているかを判断するために大切です。

特に胸の中を開ける手術では、自分の力だけで十分に呼吸をすることが難しくなるため、人工呼吸器を使って呼吸を管理します。

どれくらい空気が肺に入っているか、きちんと二酸化炭素を吐き出せているかを確認しながら、その子の状態や手術内容に合わせて人工呼吸器の設定も調整していきます。

 

◾︎体温

麻酔中は体温が下がりやすくなります。

体温が下がると、麻酔からの覚めがゆっくりになったり、回復に時間がかかったりすることがあります。
そのため、処置中は体を冷やさないように、保温にも気をつけています。

 

 

これらの数値は、モニターをつけることで表示されます。
しかし、大切なのは「モニターをつけていること」だけではありません。

その数値が、その子にとってどういう意味を持つのか。
今の麻酔の深さは適切か。
呼吸や血圧に問題はないか。
痛みの刺激に体が反応していないか。
処置の内容に対して、麻酔や鎮痛の調整が必要ではないか。

そういったことを、処置中も確認しながら管理しています。

麻酔薬の量も、最初に決めたら最後までずっと同じというわけではありません。
その子の反応や処置の進み具合、体の状態に合わせて、必要に応じて調整していきます。

 

 

◯眠っている間から、麻酔後の回復まで考えた痛みの管理

当院が麻酔中に特に大切にしていることのひとつが、痛みの管理です。

麻酔中は眠っているため、処置中のことを覚えているわけではありません。
しかし、眠っているからといって、体が痛みの刺激にまったく反応しないわけではありません。

たとえば、皮膚や筋肉を切ったり、お腹の中の臓器を確認するために動かしたり、歯や耳など痛みを感じやすい場所を処置したりすると、体には痛みの刺激が入ります。

その刺激が十分に抑えられていないと、神経が敏感になり、目が覚めた後の痛みが強く出やすくなることがあります。

だからこそ当院では、麻酔を「眠らせること」だけとは考えていません。
眠っている間から痛みの刺激をできるだけ抑え、麻酔から覚めた後も落ち着いて過ごせるように管理しています。

このように、ひとつの薬だけに頼るのではなく、いくつかの鎮痛方法を組み合わせて、痛みをいろいろな方向から抑える考え方を「マルチモーダル鎮痛」といいます。

マルチモーダル鎮痛では、処置の内容やその子の状態に合わせて、全身に効く鎮痛薬、炎症による痛みを抑える薬、処置する場所の痛みを直接抑える局所麻酔などを組み合わせます。

それぞれ違う働きを持つ薬や方法を組み合わせることで、ひとつひとつの薬の量を必要以上に増やさずに済む場合があります。
その結果、より安定した痛みの管理を目指しながら、副作用のリスクを抑えることにもつながります。

また、麻酔中は痛みだけでなく、処置による不快感やストレスをできるだけ少なくすることも大切です。

耳の洗浄や歯科処置のように、強い痛みだけでなく、「気持ち悪い」「怖い」「嫌だ」と感じやすい処置もあります。
動物たちは、それが治療のために必要なことだと理解して我慢することが難しいため、できるだけ負担を少なく処置を行うことが大切です。

 

さらに、当院が大切にしているのは、処置中の安全管理だけではありません。
処置が終わった後、その子がどのような状態で目を覚まし、どのように帰っていけるかということも、とても大切にしています。

「麻酔をしたから、今日はぐったりしていても仕方ない」
「手術をしたから、元気がなくても当然」

そう考えるのではなく、できる限り痛みや不快感を少なくし、麻酔から覚めた後も穏やかに過ごせることを目指しています。

もちろん、処置の内容や体の状態によって、回復の様子には差があります。
すべての子が同じようにすぐ元気に帰れるわけではありません。

それでも当院では、飼い主さんがお迎えに来たときに、
「本当に麻酔したの?」
「本当に手術したの?」
と思っていただけるくらい、できるだけ元気に、穏やかに帰ってもらうことを目標にしています。

そのために、麻酔中のモニタリング、体温管理、麻酔薬の調整、痛みへの配慮、術後の様子の確認まで含めて、その子の状態に合わせた管理を行っています。

私たちにとって、動物たちは「患者さん」であると同時に、飼い主さんにとって大切な家族です。
だからこそ、年齢や検査結果、処置の内容だけでなく、その子ができるだけ怖い思いや痛い思いをせず、穏やかに帰れるかどうかまで考えながら、一人一人に合わせた麻酔管理を大切にしています。

もちろん、麻酔のリスクを完全にゼロにすることはできません。
しかし、麻酔前の検査、処置内容に合わせた麻酔計画、麻酔中のモニタリング、痛みの管理、体温管理などを行うことで、できる限りリスクを抑えられるよう努めています。

麻酔は、ただ眠らせるものではありません。
その子が必要な検査や治療を安全に受けられるように、体の状態を見ながら調整していくものです。

今回は、麻酔中にどのようなことを確認しながら管理しているのか、そして眠っている間から痛みの管理を行う理由についてお話ししました。

次回は、当院でも積極的に取り入れている「局所麻酔」についてお話しします。

局所麻酔とはどのようなことをするのか、どんなメリットがあるのか、そして注意点やデメリットも含めて、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

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