知って欲しい麻酔のお話①
- その他
◯高齢だから麻酔はできない?
動物病院で治療のお話をするとき、飼い主さんからよく聞かれる不安のひとつが「麻酔」です。
「うちの子はもう高齢だから、麻酔はちょっとねぇ」
「麻酔は怖い」
「できれば麻酔はしたくないです」
大切なご家族だからこそ、不安に感じるのは当然のことだと思います。
まずお伝えしたいのは、麻酔のリスクはゼロになることはないですし、年齢だけでリスクの大小が決まるものではない、ということです。
もちろん、高齢になることで心臓や腎臓、肝臓などの臓器の機能に変化が出たり、持病を抱えていたりすることはあります。
そのため、高齢の子ではより慎重な確認が必要になる場合があります。
かといって若いから大丈夫でもなく、先天的な病気が隠れていたりすると途端に麻酔のリスクは上がります。
なので
「高齢だから麻酔ができない」
「若いから麻酔は安全」
と単純に判断できるものではありません。
大切なのは、年齢ではなく、その子の現在の体の状態です。
当院では、麻酔が必要な処置であっても、すぐに「麻酔をしましょう」と決めるわけではありません。(緊急の場合は違ってきますが、、、)
まずは麻酔前の検査を行い、心臓や腎臓、肝臓などの臓器の機能や、現在の全身状態を確認します。
その結果をもとに、今の体の状態で麻酔を行うことが適切かどうかを判断します。
もし検査で大きな異常が見つかった場合には、麻酔よりも先に内科治療を優先した方がよいこともあります。
一方で、麻酔をしなければ不調の原因を詳しく検査できない、必要な治療ができない、症状の改善が難しいという場合もあります。
そのようなときには、リスクを慎重に評価したうえで、麻酔下での検査や処置をご提案することがあります。
だからこそ当院では、年齢だけで判断するのではなく、その子の体の状態、検査結果、処置の必要性を総合的に確認したうえで、麻酔を行うかどうかを判断しています。
なので、高齢だから麻酔はできない、なんてことはありません。
◯なぜ麻酔をするのか
手術に関しては必要というのはご理解いただきやすいとは思うのですが、麻酔は手術のためだけに行うものではありません。
耳の洗浄や傷の処置など、痛みや不快感が伴ってしまう処置や検査は、動いている状態で無理に行うことで、かえって危険になったり、動物に強い恐怖や痛みを与えてしまったりすることがあります。
押さえつけて処置を行うよりも、鎮静や麻酔を使って、眠っている間に安全に、確実に終わらせた方が、その子にとって負担が少ない場合もあります。
このように当院では、処置の内容だけでなく、その子の性格や痛みの程度も考えながら、必要に応じて麻酔や鎮静下での処置や検査を提案することがあります。
「怖い思いをさせながら無理に頑張らせる」のではなく、その子にとってできるだけ負担の少ない方法を考えることを大切にしています。
◯麻酔の方法
麻酔は「どの子にも同じ方法で行うもの」ではありません。
年齢、体重、持病の有無、検査結果、現在の体調、そして行う処置の内容によって、必要な麻酔管理はそれぞれ異なります。
そのため当院では、それぞれの症例の状態と処置内容に合わせて、麻酔薬や鎮痛薬の種類、量、組み合わせを選択しています。
特に当院が麻酔管理の中で大切にしていることは、
「できるだけ痛い思いをさせないこと」です。
手術や処置では、処置そのものの負担だけでなく、処置中・処置後の痛みをどれだけ抑えられるかがとても重要です。
もちろん、痛みを完全にゼロにすることは難しいかもしれません。
それでも当院では、全身麻酔だけに頼るのではなく、必要に応じて鎮痛薬や局所麻酔などを組み合わせながら、できる限り痛みを少なくできるように考えています。
目指しているのは、お迎えに来た飼い主さんに、
「本当に手術したの?」
と思っていただけるくらい、処置後も落ち着いて、できるだけ元気に帰ってもらうことです。
痛みが強いと、動物にとってつらいだけでなく、食欲が落ちたり、元気がなくなったり、回復に時間がかかったりすることもあります。
だからこそ、当院では「麻酔をかけること」だけでなく、痛みをどう管理するかをとても大切にしています。
◯最後に
必要のない麻酔をおすすめすることはありません。
しかし、麻酔を行うことで不調の原因を調べられる、痛みや不快感を減らせる、病気の進行を防げる可能性がある場合には、その必要性とリスクを飼い主さんにお伝えしたうえでご提案します。リスクを把握し、そのリスクをできる限り抑えながら、必要な検査や治療を行うための選択肢です。
「高齢だから治療はできない」
「麻酔が怖いから、あきらめるしかない」
そう決めてしまう前に、まずは今の体の状態を確認することが大切です。
不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。
検査結果や治療内容をもとに、その子にとってどの選択が一番負担を少なく、より良い結果につながるのかを一緒に考えていきます。
今回は、麻酔に対する当院の考え方や、その子に合わせた麻酔・鎮痛管理についてお話ししました。
次回は、実際に麻酔中にどのような管理を行っているのか、モニターで確認していることや、処置中に私たちが気をつけているポイントについてお話しします。













